阪神淡路大震災では、多くの鉄筋コンクリート造りや重量鉄骨造りの建築物が倒壊した。その原因の一つに鉄骨建築物の接合部の溶接強度が建築業界でこれまで考えられていた以上に弱かった点が上げられる。それを克服し、従来比2.5倍以上の耐震強度を持つ革新的な溶接新技術工法を開発したのが国立大学発の建設・鉄鋼ベンチャー、アークリエイト(高知市、CEO・内田昌克前高知大学教授)だ。圧力容器など金属産業で使用される溶接現場の常識を建設産業に導入、工法の徹底した簡素化・合理化を追求・開発した技術で、名称は「WAWO(ワオ)工法」。既に特許も取得している。
使用用途も低層住宅や中高層建築物、工場など幅広く適用可能。同工法を使用することで従来工法より溶接量や部材の削減、施工性も大幅に向上し、最大三割のコスト削減も実現した。同社は同工法をベースに新工法を開発し、併用することでさらなる効果を引き出すことに成功した。十一月にはミラクルスリーコーポレーション(MTC)との間で「ミラクル構法」増築に対して専用実施権契約を締結し、同工法が「ミラクル構法」に標準仕様されるなど、取得特許を軸に全国展開に乗り出している。
「阪神淡路大震災で露呈した重量鉄骨造の問題点、特に溶接における接合部の強度が弱いことが判明した。接合部分は(1)裏当金(2)エンドタブ(3)スカラップ(4)空洞パネルなどから構成され、力を伝え分散させにくい構造、つまり最終強度が弱い。例えば継手に裏当金を使用すると強度が弱くなる認識が建設業界にはなかった。
「阪神淡路大震災で露呈した重量鉄骨造の問題点、特に溶接における接合部の強度が弱いことが判明した。接合部分は(1)裏当金(2)エンドタブ(3)スカラップ(4)空洞パネルなどから構成され、力を伝え分散させにくい構造、つまり最終強度が弱い。例えば継手に裏当金を使用すると強度が弱くなる認識が建設業界にはなかった。
「一言でいえばシンプル。部品数を減らすことで施工性を向上させ、コストを従来工法の30%低減させ、同時に強度もアップし、意匠性も優れている。構造が簡略化すると必然的に溶接箇所も従来より30%減少する。
さらに、幅広い構造物に対応するため同工法をベースに五つの新工法を開発、構造物に応じて使い分けすることでより効果を発揮するわけだ。その名称は『WAWO工法+"X"工法』、"X"工法とは(1)一体化工法(2)つばなし工法(3)スロット工法(4)交差工法(5)段違い工法―から構成され、それぞれがもつ特徴とWAWO工法を併用すると、さまざまな分野で応用できる構造体を具現化したことで建築業界にも注目されている」
「ミラクルスリーコーポレーション(MTC)の特許工法『ミラクルセブンシステム』を採用した一号案件、ハイツ石田(大阪府吹田市)の躯体部分にあたる鉄骨構造部分に『WAWO工法と"X"工法』を採用したプロジェクトが進行中だ。"X"工法の1つ『スロット工法』とは、柱を切断せずに内ダイアフラムを取り付け、梁フランジ断面分の貫通孔を柱にあけたうえで内ダイアフラムと柱を外からスロット(溝)溶接する工法。中高層建築物に適した工法で、耐震強度は従来比4倍に値する。
「当社は今後の戦略として(1)技術的に補完関係にある企業との連携の強化。その一つが(特許工法をベースに展開する知財建築ベンチャー)MTCとの『ミラクル構法』における当工法の標準化を目的とした専用実施権契約(増築)の締結(2)設計会社との提携(3)取次店の開拓(4)全国に一次加工会社を設けることで特許部品の安定供給体制を構築(ハイツ石田では三作鐵構が製作)(5)全国のビジネスフェアへの出展―など当面のマーケティング戦略の柱と考えている。
今後は、特許技術である『WAWO工法+"X"工法』を軸に、ハウスメーカーや工務店、設計事務所、ゼネコンなどの提携を拡大、地震に備えて全国の鉄骨建築の耐震性をさらに高められるよう更なる開発と事業を拡大していきたい」と意気込んでいる。
(取材協力:住宅流通新聞社)
<会社概要>
「ミラクル構法」中四国地区正規統括代理店
株式会社アークリエイト
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